看護師が看護を行う上で方向性を定めるために必要な価値観として、看護観が欠かせない。
看護師養成学校で看護学生は看護観を備えるよう指導されるが、看護学生にとってこれといった正解が無い看護観をレポートするのは容易ではない。大抵の場合、患者の生命を救うため献身的に看護に携わるといった抽象的な看護観に帰着するが、実際の現場で多種多様な患者と接するうちに次第に精彩を欠くことになることは珍しくないだろう。
看護観は、いったん決めたら固定化するものではなく、状況に応じて細かい修正を加えたり方針を転換したりしても良いものだ。現場にそぐわない看護観であると気付いたら、新たな看護観を構築するべきだろう。

また、看護観は、できるだけ具体的で日々の業務に影響を与えるものが望ましい。
たとえば、短期間の治癒を目指して効率的な看護に徹するという看護観を持つ看護師がいる。できる限り医療スキルを向上して迅速に処置できることを目標とする看護観を持てば、救急救命センターや集中治療室などで活躍することが期待される。患者が次々と入れ替わる現場では、こうした看護観が求められるだろう。
一方、ターミナルケアや福祉施設など、医療行為よりも利用者のメンタルケアが重視される現場では、看護師が患者とのコミュニケーションを図り、相談相手として心の支えとなることが必要だ。こうした現場では、患者に寄り添って心情を汲む精神的ゆとりを持たなければならない。看護観も、患者のメンタル面に着目して、迅速さより交流を優先するものにシフトすることが求められる。